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日本の医療の利点と改善すべきポイント


2003/04/17 
株式会社 サイプレス 
代表取締役 伊藤雅教 


日本の医療制度について「不備、未熟である」「海外から比べても劣っている」という論調が多く見受けられるが、偏った見方である。この経済状況が悪いなかでも、医療費のGDP比率はまだ1桁台である。500〜600兆円規模の経済活動に対して高々30兆円という水準は、諸外国に較べても低い。

日本と比較すると米国では、1人当り3倍近くの医療費を必要としているし、GDP比率でも2桁の状況である。また、保険を持たない人々が5,000万人近くいる。つまり医療を必要としていても5人に1人は簡単には受診できないのである。さらに開業医に診てもらえなければ、希望した医療機関に直接赴くこともできないのが実情である。

これに対して日本の国民皆保険制度では、いつでも誰でも安心して病院にかかることができるし、医療機関も患者本人の意思で決定可能だ。その上で、諸外国と較べても低額な医療費で済んでいる事は驚くべきことである。しかしながら、経済状況の低迷、急速な高齢化、医療費負担の増加など、環境が大きく変化するなかで、医療提供サービスのさらなる改善が望まれているのは既知のとおりである。特に次のような項目では、改善が急がれるべきだろう。

まず、患者や家族が治療方法や最適の病院あるいは信頼できる医師の情報などを的確に得る方法がない。インターネットなどで調べることは可能だが、ある程度の医療知識がなければならず、簡単に名医や満足度の高いサービスなどの情報を入手できる手段がない。加えて、患者や家族が治療を受けている医療機関あるいは医師の医療体制を、セカンドオピニオンとして情報を簡単に得ることが難しい状況の改善も必要だろう。

また、診療録開示が進みつつあるが、患者・家族が要求しても簡単に開示がされず、申請書への記入や、医療機関が認めた場合に限られるなど、制限が多いのが実態である。診療録そのものも記入方法が統一されておらず、患者や家族が読んでも判別や理解が難しいものが多い。開示の推進体制と診療録の記述標準化は、電子カルテとともに推進が望まれるところだ。

一方、EBMに基づいた医療が叫ばれているが、医療サービスの質を比較するデータ自体の存在があまりにもみすぼらしい。治癒率、5年生存率、再入院率、死亡率など、さまざまな角度で比較するための(ベンチマーキング)データベースの構築が望まれる。また、リスクマネジメントのデータベースも構築できていないので、どのようにプロセスを改善したらリスクがどの程度軽減できたのか、簡単に知る方法がない。現実には医療従事者が研修などに参加して情報を得ることが多いが、院内の改善のためのナレッジデータベースとして使えるようなシステム構築は急務だろう。

「国民医療費が諸外国と較べ低い」と前述したが、これは医療従事者の献身的な働きによるところが多い。医師や看護婦の研修体制の見直しが検討されているが、財政的に貧困な医療機関では、十分な研修体制への費用補助がされていないのが現状である。これは政府が医療に対する価格にキャッピングをかけていることが原因と考えられる。良質な医療サービスを提供している場合には、それなりのインセンティブを付加するなど、弾力的な価格方策の構築は不可欠だと考える。また、良質な医療が提供できるならば、その内容を詳細にアピールできるような広告規制緩和がなされ、患者に分かりやすい医療情報の入手が可能にならなければならない。

さらに、救急体制に十分な医師・看護体制を整えると赤字に陥るため、民間病院ではその埋め合わせに、人数の多い外科や内科の医師が肩代わりをしているケースが多い。小児救急を含め公的な資金援助は必要だろう。

このように改善点を挙げれば切りがないが、やはり日本では安心な医療を受けられるのは事実であり、日本人でよかったと感じられる所以である。

株式会社日本医療企画 発行 「Phase3」 2003年3月号より転載

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