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DPC導入による収入増加の落とし穴


株式会社 サイプレス 
代表取締役 伊藤雅教 


弊社のアメリカ人コンサルタントが以前、所属していた病院とグループ病院では80年代、DRG/PPSの下で病院の収入は増加し、利益も大きく改善した。このほか在院日数短縮、経費削減、業務効率の向上も実現し、患者獲得のためにさまざまな保険組織と契約を締結した。

彼が体験したことが日本で起き始めている。弊社もこの2年間、大学病院でDPCの分析と改善を実施してきた。その結果、制度の導入前と導入後では大きな違いが出た。

特定機能病院では、DPCの包括制度のもと、あらゆる高度な医療を必要とする患者に医療を提供している。経済的インセンティブでは在院日数短縮が実現することなどありえないとの意見があったが、弊社がコンサルティングした国立大学病院でも在院日数は短縮した。また過去に携わった、あるいは関係を持った5つの大学病院でも在院日数は短縮し、医業収入は増加した。経済的インセンティブが在院日数短縮に効果を示したことをはっきり物語っている。

医療費の支払い側から見ると、期待していたのは在院日数短縮と医療費低減であったが、医療費は逆に増加したのは皮肉でもあろう。

厚生労働省は賢い。入院期間のうち、収入の高い期間の短縮やDPCの係数操作などで、医療費の低減を遅かれ早かれ実施するであろう。収入が増えると安心させて導入を促し、後から首を絞める魂胆が見え隠れする。

同じような包括払い制度が導入された韓国の大学病院では、一般病院にしてやられた感もある。同じ疾病分類の患者のうち、併存症や合併症などで治療により多くの費用がかかる患者を大学病院に送り、一般病院では在院日数の短くてすむ患者の治療に重きを置いた。その結果、大学病院のなかには大幅な赤字に陥り、出来高払いに逆戻りしたケースもある。そのような現象が今後、日本で起きないとも限らない。日本の大学病院もDPCを導入する一般病院も、高コスト体質の改善に今のうちに着手するべきであろう。

さて、DPCの分析を2年間行った結果、まったく同一傷病であっても同じ在院日数の患者は一人もいなかった。その大学病院のなかで、同一疾病で在院日数が最短の患者と最長の患者では、その日数に1.7〜5.1倍の開きがある。手術日までの在院日数もまちまちで、経費もまったくばらばらである。このように、医療の標準化はまだまだなされていないのが現状である。特定機能病院では、医療の標準化についても医療経費削減についても、まだまだ改善の余地はある。これは一般の急性期病院でもまったく同様である。

これらを考慮すると、日本の医療の現場では医師の好きなように好きなときに好きな方法で、医療サービスが提供されているとも言える。世界最高の品質を誇る日本の生産現場のように、標準化とコスト削減がなされるならば、日本は最高の医療を最も低価格で受けることができる国になるはずである。厚生労働省と医師会が言う老齢化による医療費の高騰を抑える余地は相当あるといっても過言ではない。

さて、医療現場では、患者のために最高の医療サービスを提供しようと日々、真に努力している医療人がいる。この人たちには今すぐにDPCの制度の導入を勧める。ただし、医事のシステムとしては出来高払いと包括払いの両方を持つことになるので、医事課のキャパシティーに自信のある病院にしか勧められない。というのも、現状しばらくは増収が見込めることと、この包括払い制度のなかでは、ある程度難しい状態の患者を治療することが、より高収入になるからである。この増収とコスト削減による利益の増加で、優秀な人材に十分な報酬を用意し、更新すべき医療機器や設備に投資することができる。

マーケティング的に言うところの、先駆者利益を享受することができるはずである。いまが先手必勝の時期とも言える。

株式会社日本医療企画 発行 「Phase3」 2004年6月号より転載

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