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ジェネリック医薬品全盛の南米コロンビア - 医療,病院,コンサルティング,株式会社サイプレス

 

 

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ジェネリック医薬品全盛の南米コロンビア

 

 

株式会社 サイプレス 
代表取締役 伊藤雅教 

 

■3時間かけてとる豪華な昼食

数年ぶりに南米・コロンビアのブカラマンガ市に行ってきた。飛行機に乗っていた時間だけで17時間。結局2日間かけて現地入りとなるのも、地球の反対側の国だからである。赤道に近い国は今、夏。同市は標高1,300mにあるため、一年中25度前後の気温。夏の今は朝起きると22度で、日中の最高気温が32度となる。高原と山の地域は乾燥していて、車に乗っても窓を開ければ涼しく感じる。 物価はというと、街中でタクシーに乗るとたいてい150円。クリスマスやお正月になると急に値上げされて200円ほどに。どうしてかと聞いたら、誰もが休暇を取りたいときに働いているのだからチップが含まれるのだそうだ。 昼食は、コロンビアでは2~3時間かけて食べる最も豪華な食事。自宅に帰って食事をするサラリーマンも多い。外食をしても、300円~400円。最高級のレストランでも5人で食べて6000円ほどである。たいていのレストランでお勧めの料理はなにかと聞くとだいたい肉料理という返答。頼むと厚さ3cmの牛肉(ステーキ)、豚のひれ肉、鶏肉の3種の肉料理が同時に出てくる。食べきるまでに2時間はかかる。3時間程度の昼食時間というのもうなずける。 1人当たりのGDPは年間33万円ほど。義理の姪が某企業の管理職をしているが月収は9万円程度である。物価は日本と比べて非常に安いが、インフレが7~10%程度で、数年前と比べるとずいぶん上がってきているように思える。これも石油価格の上昇の影響とのことだ。

■近隣諸国の薬剤価格情報が入手可能

さて今回、息子が歯痛のため、親戚の紹介で腕のよい歯科医にかかることになった。そういえば何年か前にも、この歯科医に私自身がかかったことがある。予約は電話一本で取ってくれた。こ、の国は知り合いや有力者であると簡単に予約が取れる。日本以上に人間関係を重んじる国で、ツテを使えば日常茶飯事に特別待遇を得ることができる。歯痛は結局抜歯しなければ治まらなくなり、受診・抜歯・薬代で2,500円。もちろん保険なしの全額自己負担の金額である。抗生剤や鎮痛消炎剤などもすべてジェネリック医薬品で、日本やアメリカでも聞いたことのない名称の薬剤であった。 また、親戚の80代のおばあちゃんは腰痛と高血圧でさまざまなジェネリックを飲んでいた。これもまた聞いたことのない名称のものである。先進国で使われている先発の薬剤は高額のため、後発への切り替えが進んでおり、ほとんどの薬剤がジェネリックだ。おばあちゃんはコロンビアの薬代が高いので、隣国のベネズエラに住む娘に、クリスマスでの帰国の際に数か月分の薬を買って持ってきて欲しいと電話で頼んでいた。ベネズエラでは薬が、コロンビアより30~40%も安く購入できるそうだ。彼女は、年に数回帰郷する娘に、そのつど薬を買ってきてもらっているので、ほとんどコロンビアでは薬を購入しないで済むという。 この国の人々は、近隣の国々でどのような薬剤がどの程度の価格で販売されているかの情報を入手している。物価が安い国の薬剤費は高額とのことだ。 息子のいるアメリカでは、近所に住むおばあちゃんがカナダで薬剤を購入するバスツアーに定期的に参加している。アメリカでも各国の薬剤価格の情報を入手でき、高いと思えば、安い国から購入する自己防衛策が取られている。

■日本でも隣国から薬を購入する日が来る?

ところで、日本にいる私の母親は、薬を隣の韓国や中国から購入するという発想は持ち合わせていない。薬の情報がアメリカやコロンビアのように提供されているわけでもないし、まして価格情報などにはまったくといっていいほど無関心である。これは老人向けの医療保険制度により、安価な負担で薬を手に入れられるようになっているからである。ある意味ではコロンビアやアメリカに比べてすばらしい制度なのであろう。 しかしながら、母親の戸棚の中には、飲まなかった薬が大量に保管されている。老人は入院時にも大量の持参薬を持ってくるが、結局、病院で処方する薬に切り替えられ、大量の薬が廃棄されることになる。医療費の削減が叫ばれているなかで、薬剤価格情報の提供と自己負担が増えると、わが国もコロンビアやアメリカのように隣国から薬剤を購入する日がやってくるかもしれない。

 

日本医療企画 発行 「Phase3」 2008年12月号より転載

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