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DPC病院の診療報酬改定とその対策 - 医療,病院,コンサルティング,株式会社サイプレス

 

 

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DPC病院の診療報酬改定とその対策

 

 

株式会社 サイプレス 
代表取締役 伊藤雅教 

 

■増収と減収の分かれ道

今回の診療報酬の改定でのDPCの見直しでは、DPC分類ごとの報酬額と期間ⅠとⅡの短縮が大きかった。DPCごとに今次改定の報酬額で算定すると、サイプレスのクライアント病院で5000万円~3億5000万円程度の減収となるとの結果が出た。 また、医療材料と薬価の改定分を考慮すると更なる減収になるのではないかと各病院の事務長は浮き足立った。
3月初めに各病院に機能評価係数と調整係数の内訳が通達され、それぞれが1.0514~1.3386という係数になり、事務長は胸をなでおろした。ただし、この係数の違いだけで同じ医療を提供しても27%の差が出るわけで、本当にDPC病院に妥当な評価を与えているのかはなはだ疑問だ。
今回の改定では、係数を反映しても増収する病院と減収する病院の2つに分かれた。増収すると期待していたのに約1億円の減収となる可能性が高いところも出てきた。一方、増収すると試算された病院では、その額が予想ほどではなかったため早急に対策を実施するところと、悠然と構えているところに分かれている。 今回のDPC改定を診療科別に見ると外科、内科で特に減収している病院が多い。小児科や産婦人科でのプラス改定で増収に転じた病院は一部の病院のみであった。DPC分類別で減収となっている症例をリストアップすると、その額は数千万円~数億円となっていた。



■9つの対策

病院では、以下のような手を打ち始めている。
1. 2007年に比べて08年では大きく減収となるDPC症例をグループ化しリストを作成した。
2. そのリストから、減収金額の多い順と症例数の多い順に並べ替えたリストを作成した。
3. 減収金額の多い順のリストから減収となる原因を3種類に分類した。
 ・DPCの改定による期間ⅠとⅡの短縮と報酬額の減少に伴う減収
 ・DPC対応になっていないクリニカルパスのための減収
 ・最も投入した医療行為のコーディング間違いによる減収
4. DPCの改定による期間ⅠとⅡの短縮と報酬額の減少に伴う減収では、入院日数の調整と病床稼動額の試算を実施した。
5. DPC対応になっていないクリニカルパスのための減収では、パスの中身の注射・画像・検査・処置などの標準化を検討し、外来で実施できる検査・画像は外来で行えるようにした。
6. 最も投入した医療行為のコーディング間違いによる減収では、薬剤・検査・処置・手術ごとに何の治療目的で投入したかを分類する。また、その金額も算出し分類する。この後に最も医療資源を投入したはずに抜けている傷病名を確定し、医師と確認することとなった。
7. これらの徹底のための医局説明会を開催し、今回のDPC改定に対する改善策を発表する。
8. DPC改定による注意点と変更点を院内に配布する。
9. 患者と連携先の病院向けに、DPC病院での変更点をリストアップしたパンフレットを作成し、地域連携室と医事課受付での周知徹底を図る。


■大きな減収要因

さて、このような改善策を実施した病院で、臨床検査と画像を外来で実施するという対策について説明すると、医師から「外来ですでに実施しているので大丈夫である」との答えが返ってきた。しかしながら、外来で検査と画像を実施してから当日入院をすると、それは入院での検査と画像と評価され、DPC制度下では大きな減収要因になることを理解できていなかった。DPC制度の下では、入院前の別な日に外来で画像と検査を実施しなければならず、患者にもそれを説明をする必要がある。DPC制度は決して患者のためになるものではないことは、この点からも言える。
また、抗がん剤治療を実施している短期入院患者関連で軒並み大幅な減収となるのは、高額な薬剤がDPC日額で賄えないからである。いくつかのDPC分類で抗がん剤が対象外として出来高で算定できるようになったが、来院患者の抗がん剤治療は多種にわたっており、それぞれが大幅な減収となって病院の経営を圧迫している。
外来化学療法への変更を実施するには、看護師と薬剤師を配置しなければならず、現状の看護師不足と薬剤師不足の下では十分な対応ができない。さらに緩和ケア、疼痛管理患者でも大幅な減収となる。厚生労働省は、これらの患者自身に一部の病院へ通わせる苦労を要求しているとしか見えない。

 

日本医療企画 発行 「Phase3」 2008年6月号より転載

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