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医療分野での情報開示と質の比較 - 医療,病院,コンサルティング,株式会社サイプレス

 

 

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医療分野での情報開示と質の比較

 

2002/07/15 
株式会社 サイプレス 
代表取締役 伊藤雅教 

 

医療の分野では最近、質に対しての懐疑的な記事を良く見かけるようになっている。医療事故を隠す体質を暴いている記事や、院内感染を防止する体制が不備であったために起きた事故であると決め付ける記事を見かける。
ただし、ほとんどの医療従事者は患者のためにできうる限りのことをしようとしているのに、このような記事が増えているのは残念である。

確かに、医療分野では、どの病院がどのような医療を提供していて、どの程度のレベルにあるのかを一般の人々が知ることは難しい。またどの医師が良い医師なのかを知ることも難しい。

さらには提供される治療に対してどの程度の金額が請求されるのかを知ることも難しい。
しかしながら、これができていないから医療を提供している人たちが怠っているというのは間違いである。これらは国によって規制されているために一般の人が知ることが難しくなっているのである。

一般産業では、特徴のある機能を持った製品とその価格情報を得ることは簡単にできるのだが、医療分野では診療の特徴や質を広告してはいけないことになっている。また診療の価格は診療報酬として厚生労働省が決定しているために、高度な医療や技術を持っていても価格に差をつけることはできない。ましてやその価格の情報を提供し比較できるようにすることなど許されてはいない。

国民が知りたい質の内容の情報と価格の情報を国が規制しているのはいかがなものであろうか。

この規制を緩和しない限り、新たな医療の正解は生まれないといっても過言ではないであろう。

コンサルタントとして海外を含めた2000病院以上の実際の病院データを入手し、分析した結果、日本の医療分野には情報として開示されているものは非常に少ないのが現状である。
医業収入、在院日数、稼働率、外来患者数、入院患者数、外来単価、入院単価、紹介率など、ある程度開示されているものもあるが、医療の質を比較できるベンチマークのデータやその病院が特徴として持っているベストプラクティスのデータを開示しているものはほとんどないといっても過言ではない。

さらに薬剤のコスト、医療材料のコスト、委託費用のコスト、保守費用のコストなどと、その質を比較できるデータを持っているところは非常に少ないのが現状である。

例えば、我々コンサルタントは各病院の手術を比較し、どの程度の収入・経費・効率と質を持ち、データベースを利用して最高の質になるようにベストプラクティスに向けて改善をするように活動をしている。このようなデータが病院ではなかなか把握されていないし、改善度も測定されていないのが現状である。

例えば細かくベンチマークの項目のいくつかを挙げると
・症例終了から次ぎの症例が始まるまでの平均時間
・患者入室から手術が始まるまでの時間及び手術時間
・手術終了から麻酔覚醒までの時間
・1症例あたりの経費
・医師別経費(同種の手術について比較)
・1症例あたりの収入
・1症例あたりの人件費
・収入に対する経費比率
・1症例あたりの平均作業時間
・術後創部感染率
・手術室利用率

以上のようなベンチマークデータを利用すると院内の効率がどの程度なのかがわかるし改善するべき業務の内容が明確になる。さらには患者にとっていくらの経費が掛かるのかが判るので、将来、医療機関が提供する医療サービス対価とその効果をアピールすることができるはずである。

例えば手術で言えば手術の成績や手術後の5年生存率、再入院率、死亡率などをデータとして用いれば俗にいう“腕の良さ”を評価できるようになる。

さてと、患者にとって質の高い医療サービスの情報が提供されれば、満足度は高くなるであろうし、それなりの価格を払うことにも納得するであろう。

従って、これからは病院自体が情報の開示として広告が十分にできないのであれば、我々のような第三者が情報を提供し、何が良い病院なのかを知らせることができるであろう。またそのように高い質のサービスを提供できる医療施設は新たなサービスの対価を要求できるようになるべきであろう。

これには、厚生労働省の規制に緩和が大きく望まれる。これによって必ずや医療の向上が促進されると確信している。

株式会社日本医療企画 発行 「Phase3」 2002年9月号より転載

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