メニュー

認知症のための感覚調整室の取り組み 国内と海外の事例 その 2 - 医療,病院,コンサルティング,株式会社サイプレス

 

 

記事・コラム一覧

ニュース・コラム

雑誌掲載情報

認知症のための感覚調整室の取り組み
国内と海外の事例その2

 

 

株式会社 サイプレス 
代表取締役 伊藤雅教 

 

前回に引き続き、感覚調整室について具体的にご紹介します。

【感覚の刺激とは何か?】
 人間は6種類の刺激を受けながら生活をしている。視覚、聴覚、触覚、味覚、嗅覚と動き、に対して6つの刺激の情報を脳に送っている。もし刺激としての情報が多すぎるなら、簡単に疲れてしまうのも事実である。
 6種類の刺激は人が生活を送るうえで必要であることと、健康で良好な生活を送るうえでも重要であると認識されている。
 高齢者で肉体的にも認知的にも制限があり、自身ではこのような刺激を受けることができない場合には、複数の感覚刺激を得られるようにサポートするのがよいとされている。

 適度な感覚刺激はストレスの解消や退屈さの解消に役立ち、活動とともにコミュニケーションを促進し心地よさと落ち着きをもたらす。

 感覚の刺激では視覚、聴覚、触覚、味覚、嗅覚や動きの6種の刺激が大事である。
 (例えば、空間認識や方向感覚では、どの方向にどの程度の速さで動いているか)

 どの程度の感覚への刺激が適当であるかは個人差があり、感覚への刺激を求める人か避ける人かによっても異なる。感覚への刺激を求める人では、よりたくさんの感覚的刺激に順応するので、 刺激が少ない場合は自身で刺激を得ようとする。例えばそのような人は、TVの接続を外して大勢の部屋に持っていくなどで刺激を増やそうとする。
 逆に、感覚への刺激を避ける人では、その環境自体の刺激が多すぎると感じる場合があり、その時はその場から移してあげるとよい。例えば、その建物から離れることや誰かほかの人と話をできるようにしてみるのもよい。
 そのために、感覚室には以下のようなツールキットを用意しておくとよい。

 

 

誰しも、実世界では五感(視覚、聴覚、触覚、味覚、臭覚)の刺激を受けた生活をしているのだが、 刺激が多いと人のたくさんいるショッピングセンターのようにうんざりしたり、刺激が少ないと興味を失ったりする。
このガイドラインでは、適切な「感覚調整」が、よりよい実生活を送るうえでも役立つと報告されている。
肉体的な衰えで、さまざまな刺激を受ける機会が減ってしまう高齢者が、 つまらなくなってしまうことに対する予防や、コミュニケーションの改善に効果を期待できる。以降、複数回にわたり、海外での取り組み事例と感覚調整の実際の部屋作りや対応策の具体例を紹介したい。




【認知症ケアに感覚室がもたらす効果とは】
 感覚室(Sensory room)は、スノーゼレン(Snoezelen)ともMSE(Multi Sensory Environment)とも呼ばれ、 コントロール下で、感覚(視覚、聴覚、触覚、味覚、嗅覚や動き)を刺激してくれる場所で、多様に感じられる体験を楽しめる空間のことである。
 刺激を増やすのも減らすのも、治療目的によって調節され、また本人の興味の度合いによっても調節される。 そんな空間を持つ部屋は、物品をどう配置するかによって、本人への刺激を与えることにも落ち着きを取り戻すことにも使うことができる。

 この感覚室のコンセプトはオランダで1980年代から始まった。最初のころ、MSEは身体障害を学ぶための、大人のレジャーとして使われていた。 現在では自閉症・頭部外傷・脳卒中のように視覚・聴覚や身体の障害を持つ人にも使われている。MSEは身体の障害者が障害からはなれて活動できる場を提供でき、 ケアワーカーや家族やが本人へのケアをする場合に利用できる。

 今までのMSEでは工業製品を使い刺激を提供してきた: バブルが噴き出る柱、色つきの光学ファイバー(視覚用)、CDプレーヤーや音響システム(聴覚用)、アロマ芳香(嗅覚用)、ウォーターベッドや振動椅子(動き用)。
以下の2つの事例は実際にこの目的のために作られた部屋である。左はイギリスの例、右はオランダの例




MSEや感覚室が認知症に対して楽しさとリラックスをもたらすことが、研究と事例によって明らかになっている。 
しばらく感覚室で過ごすと、認知症後期の人の気持にも行動にも良い変化が表れ、また、周りにも興味を持つようになってくる。職員にとっては、このような改善が、利用者と毎日の業務に役立つと感じることができる。 
 しかしながら、感覚室が期待通りの効果をもたらさなかったという理由で、使用を中止したという報告も一方である。理由として考えられるのは、空間の設定の仕方やデザインに問題があったか、どう使うかをあまり検討しなかったからであろう。そのために認知症に使われなかったりしている。

 

Copyright © 株式会社サイプレス All Rights Reserved.[login]